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真のブランド力とはなにか。 『ビジネスで一番、大切なこと』

ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業

ヤンミ・ムン ダイヤモンド社 2010-08-27

by ヨメレバ

ビジネスに携わったことがある人なら、一度は「差別化」という言葉を聞いたことがあると思います。
いかに競合の製品・サービスと違いを作るか。どうやって一般の消費者にその違いをアピールして、気に入ってもらい、売り上げを伸ばすか。マーケティング担当の人ならいつでも頭の中にある悩みです。

ハーバード・ビジネススクールで教鞭をとる著者によるこの本は、その「差別化」についての本です(原題は DIFFERENT. ちなみに著者は企業訪問を多数行い、スタディーケースが人気だそうです)。
「差別化」についての本といっても「みんなが言ってる『差別化』はやっぱりビジネスで一番大事だよね」というものではありません。むしろ「私たち、ほとんどの商品同士の違いをたいしてわかってないんじゃない?」という本です。

たとえばカメラが好きな人がいたとしましょう。その人なら、ソニーのあのデジカメとニコンのあのデジカメの違いが分かるでしょう。どうしてもこのカメラブランドが好きという人もいるでしょう。横文字で言えば「ロイヤリティの高いカスタマー」です。

では、同じ人がドラッグストアに並んだ10個の食器用洗剤の違いがすぐに分かるでしょうか? どれか「これ!」というものを選べるでしょうか? あるいはマーガリンはどうでしょう。

おそらくどれもだいたい一緒に見えるので「テレビで見たことがあるから」「安いから」という理由で選ぶと思います。

どの企業も差別化を求めているはずなのに、どうしてこうも似たもの同士の集団になってしまうのでしょう。言い換えれば、どうしてイノベーションが生まれないのでしょう。

著者ヤンミ・ムンは、実はマーケティングによる「差別化しよう」という戦略、競合の分析と比較・対抗策こそが、むしろ違いをどんどんなくしてしまうのではないかと問いかけます。

ユーザーアンケートによる競合比較を行い、他社の長所に追いつきながら自社の欠点を補い、同じ土俵で争えば争うほど、お互いにどんどん近づいていきます。出せる違いは細かなものになり、陳列棚にはほとんど変わらないものが山ほど並びます。

その結果、私達はこう言うのです。 「○○的なやつ買ってきて」
ここにあるのは差別化ではなく類似化です。

が、しかし。この世の中には人の心をとらえて離さないブランドがあります。

かならずしも全員の心ではありません。でもそのブランドのファンにとってはどうしてもコレがいい。この本ではそうした真の差別化、ほんとうに違っているブランドを「アイディア・ブランド」と呼び、いくつかに分類する試みをしています。

「ほんとうに違っているブランド」という時、どんなブランドが思い浮かぶでしょうか?

この本ではこんな例が取りあげられます。

  • その傲慢ささえファンをひきつけるアップル。
  • トップページがサービスの哲学を物語るグーグル。
  • ビッグサイズSUV全盛のアメリカで「XXL XL L M S MINI」のメッセージを放ったミニクーパー。
  • 家具店から接客も豪華さも取り去ってしまったイケア。
  • 社会問題を訴えるキャンペーンに挑むベネトン。
  • CM美女のイメージから背を向けたダヴ。
  • ペットという売り方で未熟な技術を逆手にとったソニーのAIBO。
  • 細身の若い女子以外お断りのホリスター。
  • メニューが十年一日のハンバーガーショップIn-n-Out。
  • 他にもハーレーダビッドソン、ビルケンシュトゥック、シルク・ド・ソレイユ、レッドブル、などなど。

もちろん他にもこのリストに値するブランドはあるでしょうが、それにしても錚々たる名前、革新的なイメージや強いこだわりを思い出す名前ばかりです。替えが効かない、あるいはそのカテゴリーのトップブランド。

でも著者は、ビジネススクールの生徒たちが働くのはこのような輝かしいブランドばかりではないことを知っています。アメリカでもヨーロッパでも、このようなブランドは稀なのです。

ではなぜそのブランドは輝けるのか。その秘密は本書を読んでいただくしかないのですが、私がヒントになると思うのは以下の「注目を集めるのとメッセージを伝えるのとは違う」と書かれている部分です。

 注目を集めるということで言えば、努力せず、考えもせずにやってのける輩がいつの時代もいるだろう。大声を出したり、馬鹿なふりをしたり、学校にくたびれたパジャマを着て行ったりして、関心を引こうとする。しかし、じっくり考える時間があれば、私たちは、何も言わない人間と何かを言っている人間を区別し、前者を無視していることがわかる。後者こそが、私たちが強い関心を示す相手であり、純粋に異なる視点でみつめる相手だ。

 ブランドも同じだ。簡単な仕かけを探し、注目を引く曲芸をやってのけるブランドがいる。 [中略] しかし、結果的には、渡した市はそういった無数のブランドを無視し、ダヴやハーレー、アップルを大切にしまい込む。なぜなら、後者は波紋を呼ぶような方法、私たちに語りかけるような方法で逸脱するからだ。
ヤンミ・ムン著、北川知子訳『ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業』(ダイヤモンド社、2010)p.152

「差別化」を考えたい人にお勧めの一冊です。

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別の角度から競争について考えた本。

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