— ushilog

ユーザビリティへの誘い。『ウェブユーザビリティの法則』

ウェブユーザビリティの法則 改訂第2版

スティーブ・クルーグ ソフトバンククリエイティブ 2007-03-01

by ヨメレバ

この本はWebサイトのユーザビリティについて書かれた本の中では古典に属するものでしょう。
英語の初版が2000年、第2版が2006年。一年前の話題でさえ懐かしく思われるネット業界ですが、それでも読み続けられているのは、ネットを使うユーザー心理の基本を抑えているからだと思います。

ユーザビリティというものは意識しないとなかなか分かりにくい概念です。
優れたユーザビリティはその姿を隠してとくに意識させないですし、ダメなユーザビリティに触れた時には「使いにくい」「何をしたらよいか分からない」と思っても「これはユーザビリティが悪い」とは思わないものです。

さらにややこしいことに、ユーザビリティの良し悪しと、そのサイトやアプリを使う時の経験の良し悪しは違うものです。
ユーザビリティは良く「なにがどこにあるかストレスなく分かる」けれども、「さっぱり中身がないサイト」や、「使っていてつまらないアプリ」というのはあり得ます。UXが悪い、とも言えますね。

しかし仮にコンテンツが良くてもユーザビリティが悪いと、そもそも使ってもらえたり読んでもらえる可能性が下がってしまいます。
その意味で、ユーザビリティはユーザーに受け入れてもらうためのマナーのような役割を担っています。

この本は網羅性よりも実用性を重視しており、著者スティーブ・クルーグ(Steve Krug)自身がその考えを「三つの法則」として分かりやすくまとめてくれています。

1. ユーザーに考えさせない

これが基本中の基本です。
その画面をぱっと見た時に迷わないこと。何ができるのかすぐ分かること。格段の理由がない限り、似たサイトとのお約束が守られていること。
と言うのは簡単なのですが、このためには各要素の強弱と配置、ラベリング、ボタン・リンクのデザイン、カコミ枠のデザインなどなどをうまく工夫しなければなりません。
「見やすくすっきりさせよう」としたつもりが、やたらスカスカで中身がないように見えるページになったことが私にもあります。

ユーザーは(私自身もそうですが)「ページを隅から隅まで読まなくちゃ」などとはまったく思っていません。
自分に必要そうなものがあるか・ありそうかどうかだけを全体の配置や強弱からさらっと判断して、期待が持てそうなら、とりあえず関係がありそう・クリックできそうなところをクリックする。著者が実体験から得たそんなユーザー像がこの法則の前提となっています。

2. 何回クリックしなければならないかは問題ではない。どのクリックも考える必要がなく、明白であるかぎりは

一般的には遷移が多いとCVRが下がると言われていますが、一見それを否定するような法則です。
この本はマーケティングの本ではなくユーザビリティの本ですから、すでにユーザーの目的がはっきりしている場合の法則を言っているのはないかと思います(発送状況を確認したり、あるいはほかのサイトですでに購入意欲が高まっていて注文しに来た場合、など)。

いわく「何も考えずに、これしかないだろうと3回クリックするのと、これかなぁと迷いながら1回クリックするのとは同じ重みを持つ」(p.50)だそうです。

ECサイトで「カゴ落ち」の原因となる「いつまで行ったら終わるのかわからない注文画面」なども、クリックすればするほど目的が遠ざかるので苛立ちが募るのかもしれませんね。

3. 各ページの言葉を半分にしたら、残りをさらに半分にせよ

これはつい書きすぎる私には耳が痛いのですが、ユーザーはとても忙しいので無駄な売り文句や必要以上の言葉は省くべしというものです。「無駄口、死すべし」。
セールスレターの分野でも似たようなことが言われますかね?

この3つのポイントのほかにも

  • 「トップページは難しい」
  • 「マーケターとデザイナー、エンジニアの発想の違い」
  • ナビゲーションのいろいろ(グローバルナビゲーション、ローカルナビゲーション、パンくず、検索)
  • サイトの信頼感を上げるものと下げるもの
  • ユーザビリティ・テストのやり方

など、面白いトピックが満載です。

ナビゲーションはサイトの要素ではなく「ナビゲーションはウェブサイトそのもの」という主張もうなずかされました。

例に挙げられているサイトはさすがに書かれた年もあり古いサイトが多いですが、著者が実際にダメだしと修正案を出していて参考になります。紙面上のコンサルですね。挿絵も豊富で、サイト制作に携わった人なら「あるある」という話が一つは見つかると思います。

コンテンツの魅力をユーザーに伝えきれているか自信が持てない方には一読の価値がある本です。

ウェブユーザビリティの法則 改訂第2版

スティーブ・クルーグ ソフトバンククリエイティブ 2007-03-01

by ヨメレバ

こちらは通称「白熊本」。参考図書として著者クルーグのお勧めでもあります。

Web情報アーキテクチャ―最適なサイト構築のための論理的アプローチ

ルイス ローゼンフェルド,ピーター モービル オライリージャパン 2003-08

by ヨメレバ

この本も有名ですね。こちらも推薦されています。

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

ドナルド・A. ノーマン,D.A. ノーマン 新曜社 1990-02

by ヨメレバ

photo by: Rosenfeld Media
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